診療科目 耳鼻咽喉科
手術分類:短期入院
●従来の鼓膜形成術
・鼓膜にあいた穴(鼓膜穿孔)をふさぐ手術(鼓膜形成術)は、従来、耳後部(耳介の付け根)を切開して、鼓膜を全部、はがして、側頭骨筋(こめかみの筋肉)の筋膜の一部を採取して、自家移植するため、2週間以上の入院加療を要していました。
・新しい鼓膜形成術(湯浅式接着法)は経外耳道的に主に局所麻酔で鼓膜形成を行うもので、日帰りあるいは1泊入院で手術が可能になりました。
・対象となる患者さんは、外傷性鼓膜穿孔、鼓室チューブ抜去後の穿孔残存、慢性(穿孔性)中耳炎などの鼓膜に穴が開きっぱなしになった方です。
●麻酔・手術方法
・麻酔の手順は、始めに外耳道、鼓膜を消毒します。ついで、鼓膜に麻酔液を湿らした綿球を密着させ、15分ほどおきます。この処置により、ほとんど無痛性に手術が行えます。
・鼓膜の穿孔が大きい場合はさらに耳の穴の中と後に痛み止めの注射を追加します。
・次に耳の付け根の下のほうに痛み止めをしてから、1cmほど切開をして、皮下組織を採取します。
取り出した組織は穿孔の1.5倍程度の大きさに加工して、鼓膜の移植材料に使います。
・顕微鏡下に鼓膜穿孔の辺縁部をきれいにして、鼓膜を移植する準備をします。
・移植材料をいったん鼓室内に挿入し、手前に引き上げて鼓膜の裏側に密着させます。
・接着が確認できたら人工の糊を穿孔縁に1滴づつ、数滴滴下して固定します。
・術後は耳内に軽くガーゼをつめます。手術後は数時間、安静にしていただき、経過をみます。入院期間は1日間です。
手術前の検査
聴力検査、X線、細菌培養検査、中耳内視鏡検査、中耳機能検査
補足注意事項
・翌日、特に問題がなければ、そのまま退院し、感染予防のための抗生剤を数日間、服用します。
・術後、7日目に外来で耳の後の抜糸を行います。
・穿孔の完全閉鎖までには約1ヶ月を要します。
・1、2週間に1度ずつ外来を受診していただき、移植片がずれた場合はその場で修正します。
・再穿孔を起こし、3ヶ月以上持続する場合は再手術を考慮します。
・この方法による穿孔閉鎖率(成功率)は約90%です。
・ごくまれに、一過性のめまいや耳鳴、顔面神経麻痺、耳出血が生じることがありますが、1泊すると大体、落ち着きます。
費用・その他
50,000円〜
日帰り、または1泊入院